
「通関士を取れば食いっぱぐれない」という声がある一方で、「給料が安い」「やめとけ」という意見も目につきます。どちらが正しいのか判断できないまま、資格を取るかどうか迷っている人は少なくありません。
先に結論を言うと、通関士が「食いっぱぐれない」かどうかは、どの業種・どの会社で働くかと、実務経験を積めるかどうかによって変わります。資格そのものより、使う環境が先に問われる資格です。
この記事では、「食いっぱぐれる」と言われる理由を整理したうえで、独占業務と実務経験者の需要から収入の安定性を判断する材料を提供します。向いていない人・向いている人の条件も明確にするので、取るかどうかの判断にそのまま使えます。
✅ この記事で分かること
- 📌「食いっぱぐれる」と言われる理由の構造(就職先・自動化・経験不足)
- 📌 独占業務3種類と実務経験者の需要が途切れない仕組み
- 📌 収入が安定しやすい人・しにくい人の違い(業種と経験が鍵)
- 📌 費用・合格率・最初に確認すべき求人と講座の選び方
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通関士が「食いっぱぐれる」と言われる理由
「食いっぱぐれる」という懸念は、主に5つの事情から生まれています。これらは混ざって語られることが多く、それぞれを切り分けると実態が見えやすくなります。「資格全体の問題」として語られていることの多くは、「どの業種に入るか」「実務経験があるかどうか」という条件の問題であるケースがほとんどです。
試験合格後も、就職先が限られる業種にある
通関士として資格を活かせる職場は、通関業者(フォワーダー)・商社の通関部門・大手メーカーの輸入管理部門が中心です。一般的な事務職や販売業では資格の出番がありません。働ける会社の数が限られているため、「取っても就職できないかもしれない」という不安が生まれます。ただし、これは「需要がない」のではなく、「特定の業種でしか使えない」という話であり、その業種に入れれば別の話になります。
実務経験のない合格者は採用ハードルが上がりやすい
通関士試験に合格しても、実務経験なしでは即戦力として評価されにくい側面があります。通関業者は貿易実務の現場知識を重視することが多く、未経験者よりも実務経験者を優先する求人が多いのが現状です。資格はあっても「どの業務を経験してきたか」を問われる場面が出てきます。
AI・EDI化で書類作成の一部が自動化されている
輸出入申告の電子化(NACCS:通関情報処理センター)が進み、書類作成の補助作業はシステムで処理される部分が増えています。「将来的に通関士の仕事がAIに奪われるのでは」という懸念はこの流れから来ています。ただし、申告行為そのもの・法的判断・税関との交渉は資格者の独占業務であり、完全な自動化は構造的に難しい点があります(詳しくはH2-2で整理します)。
合格率が低く、勉強コストが見合うか分かりにくい
通関士試験の合格率は例年おおむね10%前後で推移しており、情報処理系の資格と比べると難関の部類です。一般的に独学では300〜500時間程度の勉強時間が必要とされ、時間をかけた割に就職先が限られるため、「割に合わない」と感じる人が出てきます。「やめとけ」「低収入」という声の多くは、通関業者の待遇格差(大手と中小で差が出やすい)からも来ています。
「給料が安い」という声が出る背景
通関業者は中小企業が多く、会社の規模によって年収に大きな差が出ます。大手商社や大企業の通関部門では相応の待遇が期待できますが、小規模な通関業者では給与水準が低くなるケースもあります。「通関士は低収入」という印象は、こうした会社規模の分散から生まれている部分が大きく、資格全体の話ではありません。
通関士が食いっぱぐれにくいと言われる根拠と、判断に必要な条件
「食いっぱぐれない」と言われる理由には、構造的な裏づけがあります。一方で、誰にでも当てはまるわけではなく、どの状況で取るかによって意味が変わります。「法律による独占業務」と「営業所ごとの設置義務」という2つの制度的な仕組みが、通関士の需要を構造的に支えている点を理解しておくと、判断がしやすくなります。
法律で定められた独占業務が3種類ある
通関士には、関税法によって定められた独占業務があります。具体的には、①他人の依頼を受けて行う通関書類の審査・作成・提出、②通関書類への記名・押印、③通関に関する輸出入申告などの行為です(関税法第79条ほか)。これらは通関士の資格者でなければ法的に行えない業務であり、自動化しても「申告責任を持つ資格者の関与」は除くことができません。これが「AIに仕事を奪われにくい」と言われる構造的な理由です。

実務経験者への需要が途切れにくい仕組み
通関業者にとって、通関士の資格を持ち実務経験がある人材は採用の優先度が高い傾向があります。理由は、通関業を開業・運営するには営業所ごとに通関士を設置することが義務付けられているからです(関税法第14条)。通関業者が増えるほど、または既存の通関士が退職するほど、資格保有者の需要は生まれます。実務経験者は転職市場で継続的に求人が出る構造になっています。
平均年収は給与所得者の平均を上回るデータがある
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」では、通関士の平均年収は約591万円と紹介されています。国税庁「民間給与実態統計調査」(令和5年分)では給与所得者全体の平均年収は約460万円とされており、130万円程度の差があるという情報です。ただし、年収は会社の規模・業種・勤続年数によって幅があるため、この数値は一つの目安として参照してください。

向いていない人の条件
次のいずれかに当てはまる場合は、通関士の資格を今すぐ優先させる意味は薄くなります。貿易・輸出入業務と無関係の職場を想定している人、通関業・商社・メーカーの輸入管理部門への就職・転職を目指していない人、または資格取得を目的化しており、どの業種で働くかの出口をまだ決めていない人です。通関士は資格単体より、使う業種と一緒に考えないと効果が出にくい資格です。
向いている人の条件
逆に、次の条件に当てはまる人には意味が出やすいです。通関業者・商社・大手メーカーの輸入管理部門に就職・転職を目指している人、現在フォワーダーや貿易実務の仕事をしており、昇給や転職の選択肢を広げるために資格を取りたい人、または英語力と組み合わせて貿易実務のスペシャリストとして長く働きたい人です。
なお、在職者か異業種転職者かで状況は変わります。現在フォワーダー等に勤める在職者なら、業務経験が採用評価に加算されるため、資格が昇格・転職時の明確な加点になります。一方、一般事務・販売職など全く異なる職種から通関業への転職を目指す場合は、資格単体では採用ハードルが下がりにくいケースもあります。その場合は次の「費用と合格率の現実」の項で確認してください。

費用と合格率の現実
受験料は3,000円(令和6年度・変更がある場合は税関公式サイトで確認してください)。合格率は例年10%前後で推移しており、宅建(15〜17%前後)や簿記2級(20〜30%台)と比べると難易度は高めです。過去の合格率推移は税関公式サイトで公開されているため、受験を検討する際の参考にしてください。市販テキストと過去問での独学合格実績はあり、受験者の体験記では300〜500時間を目安に挙げるケースが多いです。費用より時間の確保がハードルになるケースが多く、通信講座を使うことで学習効率を上げる選択肢もあります。また、雇用保険の教育訓練給付金の対象となる講座もあるため、費用の一部が戻る可能性もあります(対象かどうかはハローワークで確認してください)。
異業種から転職を目指す場合、求人で「歓迎止まり」が多い状況なら、通関士資格単体よりも「通関事務補助」や「貿易事務」での採用から実務経験を積むルートが現実的です。ハローワークや求人サイトで「通関 事務 未経験」「貿易事務 未経験」と検索すると、実務未経験歓迎のポジションが一定数出ています。業務に就きながら資格取得を目指すと、採用側も「実務と学習を並走できる人材」として評価しやすくなります。


通関士は独占業務を持つ国家資格であり、実務経験者への需要は構造的に途切れにくいという特性があります。一方で、就職先が特定の業種に限られるため、その業種での就職・転職を目指していない人には効果が出にくい。「食いっぱぐれる」か「ない」かは、あなたがどの業種で働くかと、実務経験を積める環境に入れるかどうかで分かれます。まず自分が想定している職場の求人で、通関士がどのように記載されているかを確認してみてください。参考として、通関士を取るか判断する前に確認したい5つの現実もあわせて読んでみてください。
よくある質問

収入実態だけでなく、「やめとけ」と言われる理由そのものを整理したい人はこちら。
まとめ:通関士が食いっぱぐれないかは、業種と実務経験で決まる
通関士が「食いっぱぐれない」かどうかは、独占業務の有無・実務経験者の需要構造から見ると、特定の業種では安定しやすい資格です。ただし、就職先の業種を絞らずに取っても効果が薄い。まず確認すべきは、自分が想定している職場の求人で、通関士がどう扱われているかです。必須欄にあれば意味が大きく、歓迎止まりが中心なら実務経験を先に積む方法も選択肢に入ります。最後に自問してみてください。貿易・輸出入の現場に関わりたいという意欲と、その業種の求人に飛び込める準備があるかどうか。そこが、通関士が「食いっぱぐれない」選択肢になるかどうかの分かれ目です。

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