
「通関士 やめとけ」と検索すると、「きつい」「給料が安い」「将来AIに仕事を奪われる」といった声がヒットする。
一方で、通関士は貿易に関する唯一の国家資格であり、輸出入総額は1950年に統計が始まって以来、増加傾向が続いている。モノが国境を越える限り関税と検疫の手続きはなくならないため、需要そのものはなくならないとも言われている。同じ資格について、なぜ評価がこれほど分かれるのか。
検索結果に並ぶ「やめとけ」という言葉は、実は一つの理由ではない。責任の重さ、労働環境の波、給与への不満、将来性への疑問など、複数の異なる事情が混ざって語られている。
この記事では、「やめとけ」と言われる背景にある業務の実態、年収591万円という数字の意味、AIによる影響、試験の難易度を、公的な統計データを中心に整理する。判断するための材料を、ここで一度並べておきたい。
✅ この記事で分かること
- 📌 「通関士はやめとけ」と言われる4つの構造的な理由
- 📌 年収591万円のリアル(全国平均・年代別推移・他資格との比較)
- 📌 AIの影響を受けにくい業務と、変化していく仕事の形
- 📌 試験の合格率16.9%・必要な勉強時間・科目免除制度
- 📌 通関士に向いていない人・向いている人の条件
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「通関士はやめとけ」と言われる理由|現場で語られる4つの構造
「通関士はやめとけ」という言葉の裏には、複数の異なる事情が混ざっている。一つずつ分けて見ていく。

ミス一つが数百万円規模の損害につながる責任の重さ
通関士の主な仕事は、輸出入する貨物のHSコード(品目分類)を判定し、関税額を確定させることだ。このHSコードの判定を一つ誤ると、関税率が変わり、荷主に数百万円規模の追加負担が発生することがある。輸入する貨物には9桁の「輸入統計品目番号」が割り当てられ、その分類は約9,000種類にのぼる。
申告内容に誤りがあった場合のペナルティは、発覚のタイミングによって変わる。
- 税関の調査前に自主的に修正:ペナルティなし(不課税)
- 調査通知後・指摘前に修正:5%
- 調査後に申告漏れが発覚(原則):過少申告加算税10%
- 意図的な隠蔽と判断された場合:重加算税35%
- 許可なき輸出入(密輸など):5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金
- 偽りの申告による関税ほ脱(脱税):10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金
数字の入力ミス一つが、こうした重い結果につながる可能性がある。この緊張感が「きつい」という評価の一因になっている。
確認すべき法律は、関税関係の法律だけではない。輸入する品目によっては、食品衛生法・薬機法・植物防疫法・外国為替及び外国貿易法など、最大で12の省庁にまたがる「他法令」の許可や届出が必要になる場合がある。どの法令が関係するかを見極め、必要な証明書がそろっているかを確認する作業も、通関士の仕事の一部だ。
船と飛行機のスケジュールに左右される、繁忙期の波
通関業務は、船舶や航空機の到着・出発時刻に連動して動く。天候不良や欠航、突発的な検査などで予定が変わると、深夜残業や休日出勤が発生しやすい。
月末月初、年末年始、大型連休前、季節商品が動く時期などは、業務量が一時的に急増する。この「波」がある働き方が、人によっては大きな負担になる。
たとえば、台風で船の入港が1日遅れただけで、その日に予定していた申告作業が翌日にまとめて発生することがある。スケジュールが外部要因で変わりやすいことが、見通しの立てにくさにつながっている。
荷主と税関の間に立つ「板挟み」の負担
通関士は、荷主(コストとスピードを重視する顧客)と税関(厳格な法令遵守を求める行政)の間に立つ。両者の要求は方向性が異なることが多く、その間で調整する役割は精神的な消耗につながりやすい。
たとえば、荷主から「今日中に通関を通してほしい」と依頼されても、税関から追加資料の提出を求められれば、その場では対応できない。こうした状況を双方に説明し、落としどころを探る役割も担う。
現場で働く人からは、こうした板挟みの大変さについての声がよく聞かれる。
「やめとけ」は資格そのものの問題ではなく、職場環境の問題
ここまで挙げた「責任の重さ」「繁忙期の波」「板挟みの負担」は、通関士という資格に固有の欠陥というより、物流・貿易業界の労働環境に由来する側面が大きい。
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によれば、常用労働者の平均離職率は15.4%だった。この数値は業種横断の全体平均であり、通関士という職種が特別に高い離職率を示しているというデータは見当たらない。
つまり、働きやすさは資格の種類そのものより、所属する企業の人員配置や労務管理に左右される部分が大きい、ということになる。
実際、「通関士はやめとけ」と検索する人は多いです。だが、検索する人が多いことと、実際の離職率が高いことは、必ずしも同じではない。
通関士はやめとけと感じたら確認したい、年収・将来性・試験のデータ
ここからは、年収・試験の難易度・AIによる影響など、確認できる数字を中心に見ていく。「通関士はやめとけ」という言葉が、あなたの状況にどこまで当てはまるのか、ひとつずつ照らし合わせてほしい。

通関士に向いていない人の条件
次のような傾向に当てはまる人は、通関士の業務内容と相性が良くない可能性がある。
- 変化を嫌い、新しいルールや法改正を学ぶのが億劫に感じる
- 長時間のデスクワークや、細かい書類チェックが苦手
- ルーティンワークを退屈に感じやすい
- 英語の文書に強い抵抗感がある
たとえば、関税率や輸入規制は法改正のたびに見直される。一度覚えた知識をそのまま使い続けるのではなく、定期的に情報を更新する作業が発生するため、変化そのものを負担に感じやすい場合は、業務の進め方を見直す必要が出てくる。
通関士に向いている人の条件
反対に、次のような特性は通関士の業務と相性が良いとされている。
- 細部まで確認する集中力と几帳面さ
- 法改正や新しい品目知識を学び続ける知的好奇心
- 荷主・税関・船会社など、複数の関係者と調整するコミュニケーション力
- 英語の書類(インボイス、パッキングリストなど)を読み解く力
たとえば、輸入される商品の品目数は数万種類にのぼり、それぞれに分類コードが割り当てられている。新しい商品や素材が登場するたびに、どの分類に当てはまるかを調べる作業が発生するため、調べることを楽しめるかどうかは、適性に関わってくる。
年収591万円は高いのか低いのか|全国平均・年代別・他資格との比較

通関士の平均年収は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査などをもとにした資料で約591万円とされている。
これに対して、国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」によれば、給与所得者全体の平均年収は約460万円。通関士の平均年収は、全体平均より約130万円高い水準にある。
年代別の推移を見ると、経験を積むほど年収が上がっていく傾向が確認できる。
- 20〜24歳:約332万円
- 25〜29歳:約408万円
- 30〜34歳:約473万円
- 35〜39歳:約630万円
- 40〜44歳:約751万円(ピーク)
- 45〜49歳:約645万円
- 50〜54歳:約575万円
資格を取得した直後の年収は、20代前半で約220万円、初年度全体では205万円〜272万円程度とされ、591万円という平均からは距離がある。「給料が安い」という声の多くは、この入社直後の時期の実感を指していると考えられる。
他の資格と比較すると、通関士(約591万円)は行政書士(約591万円)とほぼ同水準で、宅地建物取引士(約618万円)よりやや低く、社会保険労務士(約903万円)や司法書士(約500万円)との間に位置する。
なお、通関の現場で水際対策にあたる国家公務員「税関職員」の平均年収は、令和6年国家公務員給与等実態調査報告書によると約662万円で、通関士より約80万円高い。ただし税関職員は24時間体制の交替勤務が前提となる点が異なる。
地域による差もある。大規模な港湾・空港を抱える東京・大阪・神奈川・兵庫などの都市部は、給与水準が比較的高い傾向にある。また、メーカーや商社の物流部門に所属する「インハウス通関士」は、自社の貨物だけを担当するため業務量の見通しが立てやすく、土日休みを確保しやすいという特徴がある。
業界によっても差があり、陸運・空運系の物流企業では400万円台が中心になりやすい一方、海運業界では役職や勤続年数によって年収1,000万円に近づくケースもあるとされる。外資系企業や海外駐在ポジションでは、平均年収600万〜800万円程度とする情報もある。
通関士は「通関業の許可」を受けた企業に所属して初めて名乗れる資格だ。個人で通関業の許可を取得して独立することも制度上は可能だが、現実的な障壁は大きい。輸入時に発生する関税・消費税を一時的に立て替える必要があり、数百万円から数千万円規模の資金力が求められるためだ。独立を考える場合は、通関業そのものより、貿易コンサルタントや行政書士などと組み合わせて開業するケースが多い。
適性の面でも、税関職員とは違いがある。税関職員には、密輸や偽造品の取り締まりに対応するための強い責任感に加え、早朝・深夜・土日を含む不規則な交替勤務への耐性が求められる。規則的な生活リズムを重視する人にとっては、通関士の方が選びやすい働き方になる場合もある。
合格率16.9%・勉強時間400時間・科目免除制度の実態

通関士試験は受験資格に制限がなく、誰でも受験できる。試験は「通関業法」「関税法等」「通関実務」の3科目で、いずれもマークシート形式。3科目すべてで基準点(6割程度)を超える必要がある。3科目のうち、電卓を使った税額計算と申告書作成の知識を問う「通関実務」が、最も対策に時間がかかる科目とされている。
過去の試験結果(税関の公式発表)では、合格率は年度によって7.0%〜30.4%まで幅があり、全実施回の平均は16.9%とされている。学習時間の目安は約400時間。最新の試験結果や受験案内は、税関の通関士試験のご案内で確認できる。
実務経験者には科目免除制度がある。
- 実務経験5年以上:「通関実務」が免除され、2科目受験になる
- 実務経験15年以上:さらに「関税法等」も免除され、「通関業法」1科目のみになる
実務経験5年以上で2科目受験になった場合の合格率は、年度によって10%台から20%台まで差がある。1科目のみで受験できる経験15年以上の受験者の合格率は、ある年度の統計で67.2%と高くなっている。実務経験の有無で、難易度の感覚は大きく変わる。
受験者数の規模感としては、ある年度では全科目受験者が7,000人台、合格者が1,000人台という結果が公表されている。母数としては小さくないが、合格率が示すとおり、3科目を同時にクリアするのは簡単ではない。
AIで仕事が減るのか、変わっていく仕事の形

NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)への入力など、定型的な書類作成業務は、すでにRPAやAIによる代替が進んでいる。実際に、RPAの活用によって年間1,000時間相当の作業時間を削減した、という事例も報告されている。
一方で、次のような業務は、人による判断が必要とされている。
- EPA(経済連携協定)の解釈と適用、原産地規則の判断
- 食品衛生法や薬機法など、他法令の現場ごとの個別判断
- 税関への説明・交渉、荷主への代替案の提示
単純なデータ入力から離れ、サプライチェーン全体を見た助言ができる人材へと、仕事の重心が移っていく可能性がある。
たとえば、これまで「書類を作成して提出する」ことが仕事の中心だった部分は、システムが代替する領域が広がっていく。一方で、ある品目がどの法令の対象になるか、どの経済連携協定(EPA)を適用すれば有利かといった判断は、個別の取引内容を理解した人間が行う必要がある。今後は、定型作業よりも、こうした判断や調整を担う役割の比重が増えていくと考えられている。
教育訓練給付金と通信講座という選択肢

これから通関士を目指す場合、学習にかかる費用の一部が戻ってくる制度がある。一般教育訓練給付金は、受講費用の20%(上限10万円)が支給される仕組みで、対象講座かどうかはハローワークで確認できる。
独学にするか、通信講座を使うかは、約400時間という学習時間を、どの環境で確保できるかによって変わってくる。
約400時間という学習時間は、平日1時間・休日3時間程度のペースで確保すると、半年から1年が目安になる。仕事や家事と両立しながらどのくらいのペースで進められるか、最初に見積もっておくと計画が立てやすい。
よくある質問
「通関士はやめとけ」の声を、自分の状況に当てはめて考える

「やめとけ」という言葉は、責任の重さ、労働環境の波、給与への不満という、複数の事情が混ざって生まれている。
年収591万円という数字や、合格率16.9%という難易度は、こうした感覚的な評価とは別に、確認できるデータとして存在する。最終的にどう判断するかは、これらのデータとあなた自身の適性・状況を照らし合わせたうえで、決めるものになる。迷う場合は、一度にすべてを決めようとせず、確認できる項目から一つずつ整理していくとよい。
なお、国家資格に対する「やめとけ」という評価は通関士に限らない。別の資格についての整理として、「司法書士はやめとけ」と言われる5つの理由|合格した人が見ている景色も参考になる。
この記事を読んで、次に確認したいこと
A. 給付金や職業訓練について、まず公式窓口で確認したい場合
ハローワークの教育訓練給付金のページで、対象講座や給付率(一般教育訓練は受講費用の20%・上限10万円)を確認できる。
B. 通信講座の内容を見てから考えたい場合
フォーサイト通関士講座(合格率33.3%・全国平均の2.2倍)は、教育訓練給付金の対象講座でもある。資料を取り寄せて、教材や学習計画を確認できる。
フォーサイト通関士講座の資料を見る


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